0初めに

2019末、中国湖南省武漢で重症化する新しい感染症が見つかってから約半年。世界の感染者を表す地図が真っ赤に染まるような現在の事態を当初誰が想像していたでしょか?今も日本で大田区で感染が拡大し終息の兆しが見えません。

今回大森医師会では最新の情報、知識を簡潔にまとめ、医師会員の先生方、そして区民の皆様にQ&A方式でお届けしたいと思います。なお新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についてはいまだ未知な部分が多く、逐次修正、加筆してまいります。

1皆さんに守っていただきたい
新型コロナウイルス感染症の基本的な心得

  • 「敵を知り」:新型コロナウイルスの特徴や感染経路、予防・治療方法
  • 「己を知り」:今自身が何をしたらよいか、何をしてはいけないかを判断する
  • 「地の利を知る」:人的・社会的インフラをどうやって最大限活用していくか

新型コロナウイルスはまだ詳細が解明させたわけではありません。不必要に怖がったり(日品の買い占め、患者さんやその周辺への差別など)、逆に軽視する(不要不急の外出・いわゆる三密をする)ことはウイルスにとって思うつぼです。

2新型コロナウイルス感染症(COVID-19)概論

新型コロナウイルスって?

コロナの由来はスパイクのようなたんぱく質

他のコロナウイルス同様、新型コロナウイルスは球状で、コロナ、つまり冠のような形をしたたんぱく質の「スパイク」を持っている。

「コロナ」の由来は「スパイク」

これまでに、人に感染する「コロナウイルス」は、7種類見つかっており、その中の一つが、昨年12月以降に問題となっている、いわゆる「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」です。 このうち、4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10~15%(流行期は35%)を占め、多くは軽症です。残りの2種類のウイルスは、2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」です。 コロナウイルスはあらゆる動物に感染しますが、種類の違う他の動物に感染することは稀です。また、アルコール消毒(70%)などで感染力を失うことが知られています。

感染経路

現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられます。

  • 飛沫感染
    感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。
    ※感染を注意すべき場面:屋内などで、お互いの距離が十分に確保できない状況で一定時間を過ごすとき
  • 接触感染
    感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、自らの手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付きます。未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが未感染者の手に付着し、感染者に直接接触しなくても感染します。
    ※感染場所の例:電車やバスのつり革、ドアノブ、エスカレーターの手すり、スイッチなど

これまでの感染者の数から考えると、ウイルス単体が空気を漂って感染することはないと考えられます。

一方で、アメリカの研究チームの実験によると、ウイルスを含んだ液体を、エアロゾル状態、つまり霧状にして、空気中に漂わせた場合、3時間以上ウイルスが生存していたということです。これを吸い込んだ場合は、感染のリスクはあるといえます。しかし、エアロゾルは、換気ができない密閉空間など、感染防止の観点からみて様々な悪条件がそろった場合に、ごくまれに起きる現象で、通勤や買い物など、一般生活を送るうえでは心配ありません。心配ならば、定期的に室内の換気をすることをお勧めします。

3つの密を避けましょう(首相官邸HPより)

新型コロナウイルス感染症は、「密閉・密集・密接」の3要素を持つ空間で広がりやすいことも分かっています。このような「3密空間」にいる感染者は、いない感染者よりも18.7倍も他の人へ感染させやすいとのことです。老若男女、全ての人が「3密空間」を避けることが新型コロナ対策では重要です。

主に飛沫によって感染が広がる

新型コロナウイルス感染症は、他の呼吸器系の疾患と同じく、せきやくしゃみ、話をするときに放出される唾液や粘液の飛沫によって感染が広がります。こうした飛沫は1~2メートルほど飛びます。物の表面に付着した飛沫は、表面の材質よって4~48時間ほど感染力を保ち続けます(その他の感染経路として、排泄物や主に臨床現場で問題となるエアロゾル(空気中を漂う微粒子)などがありうる)。

物の表面に付着しているとより長く生存する

新型コロナウイルスに感染しないためには、他の人との間に2メートル以上の距離を保ち、せっけんと流水で20秒以上手を洗うことだ。また、アルコール含有量が体積比で70%以上の消毒液なら、プラスチックやステンレススチールの表面に付着したウイルスを消毒できるといわれています。

ウイルスの生存期間

<首相官邸HP・ナショナルジオグラフィックジャパンから改編>

目から感染するのか?

新型コロナウイルスに感染した方の咳やくしゃみ、しゃべっているときの唾液(つば)に含まれるウイルスがあなたの顔にかかった場合、目の粘膜(結膜)からウイルスが体の中に入る(ウイルスに感染する)可能性があります。また、ウイルスが付いたテーブルや椅子、パソコンのキーボードなどをあなたがさわって、そのまま手で目をこすったりさわったりした場合にもウイルスに感染する可能性があります。新型コロナウイルス感染症の基本的な対策は、手洗い(石鹸による十分な手洗い)、あるいはアルコール等で消毒することです。

  • 洗っていない手で目をさわらないようにしてください(他人から自分にウイルスを感染させない)
  • 目をさわったあとに手を洗わずに、あちらこちらをさわらないようにしてください(自分から他人にウイルスを感染させない)

今は花粉症の季節でもあり、かゆさのために思わず目をこすってしまうこともあるかもしれません。
目をさわらない・こすらない、手を洗うこと、を心がけましょう。

さらにコンタクトレンズをはめるときと、はずすときに直接目に触れますので、目に触れる前後に十分な手洗いを行ってください。普段どおりに、コンタクトレンズの消毒やこすり洗いもしっかりと行ってください。心配であれば、しばらくの間、コンタクトレンズから眼鏡の装用に代えても良いでしょう。

眼鏡やゴーグルを装用すれば、新型コロナウイルスの飛入をある程度は抑えることができますが、完全ではありません。レンズのない側面や上下の隙間から、ウイルスが侵入する可能性があります。また、眼鏡やゴーグルに触れた手で目をこすってしまうと、かえって感染のリスクを高める可能性もあることに注意してください。

<日本眼科学会HPから改編>

感染力と死亡率

まず、「基本再生産数(R0)」は、感染力の強度を示すもので、一人の感染者が(免疫の獲得あるいは死亡で感染力を喪失するまで)平均的に何人に感染させるかを表す値である。風疹は12~18、天然痘は5~7、通常の季節性インフルエンザは2~3であり、事後に推定結果が変わる可能性もあるが、WHOは新型コロナウイルスの基本再生産数(R0)を1.4~2.5の範囲と推定しています。
WHOから、コロナウイルスの致死率は2%程度との見解がありました。

※致死率=死亡症例数/感染症例数
決して人口の2%の方がなくなるわけではありません

重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)ほど致命的ではないとの予想です。(致死率:SARS 9% MERS 10%)
よく比較されるインフルエンザの致死率は、国によって異なりますが1%未満程度です。日本では抗インフルエンザ薬が多用されており致死率が0.1%(高齢者0.3%若年者0.01%)と諸外国より低いとされています。

潜伏期間

WHOの知見によれば、現時点で潜伏期間は1-14日(一般的には約5日)とされており、また、これまでのコロナウイルスの情報などから、未感染者については14日間にわたり健康状態を観察することが推奨されています。

症状

従来のコロナウイルスは一般的な風邪のおよそ10~15%(流行期は35%)を占める原因ウイルスでもあります。風邪の原因ウイルスには、ほかにもライノウイルスやアデノウイルスなどがあります。風邪の多くは喉の痛み、鼻水、くしゃみ、咳などの症状が中心で全身症状はあまりみられません。インフルエンザにおいては高熱や頭痛、関節痛・筋肉痛、体のだるさなどの全身症状が比較的急速に現れるのが特徴です。

新型コロナウイルス感染症は発熱や咳など風邪のような症状が中心であるものの、インフルエンザのように全身症状(特に強い倦怠感)がみられる場合もあります。そのため、特に初期には症状だけで風邪やインフルエンザなのか、新型コロナウイルスによるものなのかを100%判断するのは困難といえます。

新型コロナウイルス感染症では風邪のような症状から始まります。風邪のような症状とは、微熱を含む発熱、咳、ノドの痛みなどです。その他にも頭痛、だるさ、関節痛・筋肉痛などの症状がみられることがあります。

このように、新型コロナウイルス感染症は風邪やインフルエンザによく似ていますが、症状が続く期間がそれらと比べて長いという特徴があります。特に重症化する事例では、発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かってきました。つまり、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約2割弱と考えられる重症化する人はそこから徐々に悪化して入院に至るというわけです。

もう一つの特徴として、嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきました。イタリアからの報告によると新型コロナ患者59人のうち、20人(33.9%)で嗅覚異常または味覚異常がみられたとのことです。特に若年者、女性ではこれらの症状がみられる頻度が高いようです。

ただの風邪や副鼻腔炎、花粉症が原因で嗅覚異常・味覚障害が起きることもあるので「嗅覚障害・味覚障害=新型コロナ」ではありませんが、だらだらと続く風邪症状に加えてこれらの症状があれば新型コロナの可能性は高くなるでしょう。中国の4万人の感染者の解析によれば、患者の8割は重症化に至らず治癒するようです。数日~1週間以降に2割弱の患者では、肺炎の症状が増強し入院に至ることがあります。約5%の症例で集中治療が必要になりICUに入室し、2~3%の事例で致命的になりうるとされています。

4月10日時点で世界全体の致死率は6.1%となっています。中国で流行が始まった当初は2~3%で推移していましたが、流行がヨーロッパに広がってから致死率が高くなってきています。また国別に見ると、日本や韓国では2%未満と低い致死率を維持していますが、イタリアやスペインでは10%を超えています。

この致死率の違いは、

  • 感染者のうち高齢者の占める割合の違い
  • 軽症者や無症候性感染者の占める割合の違い
  • イタリアやスペインでは患者数の爆発的増加によって十分な医療が提供できていない

などによるものと考えられます。

新型コロナウイルス感染症の症状は?

新型コロナウイルス感染症の症状の頻度
(中国での1099例の報告より DOI:10.1056 / NEJMoa2002032)

3感染予防

マスクは効果的か?

飛沫感染防止にはマスクは効果的と考えられています。

咳、くしゃみによる飛散防止には布マスク使用やハンカチで口、鼻を覆い隠すことも一時的な回避手段となります。

☆ N95マスクとは:空気感染(0.5μm以下の飛沫核となり空気中を浮遊することで成立する感染(結核、水ぼうそう、麻疹など)を起こす病原菌の中でも最も捕集しにくい0.3μmの微粒子を95%以上捕集できることが基準規格となっているマスクであり、エアロゾルを浴びる可能性のある場合は着用が強く推奨されています。

正しいマスクの使い方(一般的なサージカルマスクの場合)

  1. 装着前には、まず手指衛生!
  2. ゴム紐を外側にして、プリーツ(ひだは下向き)を上下に伸ばし、マスクを完全に広げる
  3. 鼻あてを鼻の形に合わせ、マスクは顎の下まで伸ばす
  4. 顔にフィットさせながらゴム紐を耳にかける

注意!マスクのサイズが合わない、紐が緩く隙間があいている、鼻あて部分がマスクと密着していない、口だけをカバーして鼻が出ている、顎にかけた状態(顎マスク)で飲食をする(マスクの内側に飛散物を付着させる危険性あり)など誤った使用が頻繁に認められますので要注意です。

はずし方
  1. 表側に触れないようにゴム紐を耳から外す
  2. 通常はそのまま廃棄
  3. その後の手指衛生もお忘れなく!

消毒薬の使い方

ウイルスの除菌に使用できる消毒剤

手指:消毒用アルコール(濃度70%以上)
物の表面:塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム原液濃度約5~6%)(次亜塩素酸ナトリウムを含む商品例としては、ハイター、ブリーチ、ピューラックス等)

消毒液を十分に含ませてしぼったペーパータオル等で、消毒する場所を拭き取った後(一方向に拭く)、から拭きします。金属部分は腐食する可能性があるので、水拭きします。スプレー式ボトルでの噴霧は、ウイルス拡散の可能性があるため、好ましくありません。

手指がよく触れる場所を消毒する

建物の出入り口にあるドアノブ、ハンドル、セキュリティー対応のオートロックボタンなど不特定の人が触れる部分、共用のトイレ、給水場所、洗面台、エレベーターの呼び出しボタン、停止階ボタン、エスカレーターの手すり部分など。

衣類・寝具は通常の洗濯機で問題ないと言われていますが、気になる場合には、熱湯消毒(80℃、10分以上)してから洗濯機にかけます。

参考:0.05%以上の次亜塩素酸ナトリウム液の作り方
メーカー
(五十音順)
商品名 作り方の例
花王 ハイター 水1Lに本商品25mL(商品付属のキャップ1杯)
キッチンハイター 水1Lに本商品25mL(商品付属のキャップ1杯)
カネヨ石鹸 カネヨブリーチ 水1Lに本商品10mL(商品付属のキャップ1/2杯)
カネヨキッチンブリーチ 水1Lに本商品10mL(商品付属のキャップ1/2杯)
ミツエイ ブリーチ 水1Lに本商品10mL(商品付属のキャップ1/2杯)
キッチンブリーチ 水1Lに本商品10mL(商品付属のキャップ1/2杯)

【注意】
●使用にあたっては、商品パッケージやHPの説明をご確認ください。●上記のほかにも、次亜塩素酸ナトリウムを成分とする商品は多数あります。 表に無い場合、商品パッケージやHPの説明にしたがってご使用ください。

正しい手洗いの手技

  1. 流水で手全体を濡らし、石けんをつけ、両手掌をこすりながら石鹸をよく泡立てる
  2. 指を交差させながら、手掌と指間をよく洗う
  3. 指を交差させながら、手の甲を洗う
  4. 一方の手掌にもう一方の手の爪・指先を擦り合せて洗う
  5. 一方の手でもう一方の手の親指を包み込み、ねじるように洗う
  6. 最後に手首を洗う
  7. 手荒れ防止のため、流水で石けん分をしっかり洗い流す
  8. ペーパータオルで指先から手首に向かって、押さえるように水分を拭き取る
  9. 洗った手で蛇口に触れないように水を止める⇒手指衛生した箇所が不潔になってしまうためペーパータオルで押さえるように拭き取る際、強くこすると、手あれの原因になるので注意
アルコール消毒液による手指衛生の実施手順
  1. 消毒剤を必要量、手掌に取る
  2. 消毒剤を両手の指先にすり込む
  3. 指を交差させながら、手掌、指間、手の甲の順に、両手にしっかりと消毒剤をすり込む
  4. 一方の手で親指を包み込み、ねじるようにしながら両手の親指にすり込む
  5. 両手首にもすり込む

ソーシャルディスタンスとは?

感染拡大防止策として、人と人の物理的な距離を保ち濃厚接触を避けようとする取り組みです。具体的には外出の際に他の人と2メートル以上の距離を保つことに留意してください。2メートルという距離の感覚が分かりづらい場合は、自身がその場で横たわったとしても相手に届かない程度の距離と目算するのが良いかも知れません。

4新型コロナウイルス感染症にかかると
重症化しやすい人は?

年齢と致命率

これまでに報告されている死亡者は持病を持つ人や高齢者に多いことが分かっています

基礎疾患と致命率

糖尿病、慢性呼吸器疾患、心血管疾患、高血圧、がんなどの持病を持つ人では、持病のない人よりも致死率が高いと報告されています。

5乳児・小児・若年者の感染リスクについて

Q.
子どもが新型コロナウイルスに感染するとどのような症状がでますか?
A:
子どもの感染者数は成人と比べると少ないですが、感染しやすさは成人と変わらないこともわかってきました。家庭内で感染している例が多く、発熱、乾いた咳を認める一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ない様です。成人と同じように、発熱が続き肺炎になる例も報告されています。一部の患者では嘔吐、腹痛や下痢などの消化器症状を認めます。成人で報告されている嗅覚や味覚の異常が小児で認められるかは今の時点では不明です。血液検査でも明らかな特徴はありません。胸部エックス線検査や肺のCT検査を行うと肺炎が認められる患者もいますが、ほとんどが1ー2週で回復しています。感染していても無症状である可能性も指摘されていますが、子どもは正確に症状を訴えられないことに注意しなければなりません。
Q.
子どもの新型コロナウイルス感染症は重症化しますか?
A:
小児患者が重症化する割合は成人と比べるとかなり低いようです。しかし、成人同様に呼吸状態が悪くなることもあります。年齢の低い乳児などは注意が必要です。
Q.
小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもに関して特に注意すべきことはありますか?
A:
一般的に小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもの呼吸器感染症は重症化する可能性があります。ただ基礎疾患ごとにリスクや対応は異なりますので、かかりつけの医師にご相談ください。また、周囲の人が感染しないように気を付けることが重要です。こどもが新型コロナウイルスに感染したらどの様な症状が出ますか?
Q.
母乳はやめておいた方がいいですか?
A:
母親が感染している場合は、接触や咳を介してお子さんが感染するリスクがありますので、直接の授乳は避ける必要があります。母乳自体の安全性については現時点では明らかではありませんが、中国からの報告では、感染した女性6名の母乳を調べたところウイルスは検出されなかったと報告されています。従って、母親が解熱し状態が安定していれば、手洗い等を行った上で搾乳により母乳を与えることは可能と思われます。
Q.
子どももマスクはしておいた方がいいですか?マスクが出来ない場合はどうしたらいいですか?
A:

感染している人のくしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びないという観点からは、マスクをすることの利点はあるかと思いますが、小さなお子さんでは現実的ではないと思われます。子どもの患者のほとんどは、家庭内において親から感染していますので保護者の方が感染しないこと、感染した方から1-2メートル以上の距離を保つことがお子さんの感染予防につながります。

また、ウイルスに汚染されたおもちゃや本などに触れた手で、口や鼻、目を触ることでも感染しますので、手洗いや消毒も大事です。

Q.
子どもの症状が新型コロナウイルスによるものかもしれないと思ったら早めに医療機関を受診した方がいいですか?
A:

現時点(4月12日)において、国内で新型コロナウイルスに感染している小児は徐々に増えつつありますが、ほとんどは家庭内で保護者からうつったものです。また、他の病原体による感染症の可能性も十分ある状況です。地域による差がありますので、お住いの地域の保健所などの情報にご注意ください。

実際には、新型コロナウイルス感染症を疑って一般の医療機関や休日夜間急病診療所等を受診しても、診断を確定するための検査はできません。むしろ受診によって新型コロナウイルスの感染の機会を増やす危険性があることを念頭におく必要があります。

さらには、新型コロナウイルス感染の軽症者に対する特異的な治療法はありません。今の段階では、呼吸数が多い、肩で息をする、呼吸が苦しい、唇や顔の色が悪いなど、肺炎を疑う症状があり、入院加療が必要と考えられる場合を除いては、新型コロナウイルス感染症を心配して医療機関を受診することはお勧めできません。

なお、厚生労働省からの新型コロナウイルス感染症を疑う基準では、「37.5℃以上4日」とありますが、この基準では、小児の「風邪」の多くが当てはまってしまいます。この基準は成人・高齢者では適当ですが、小児では実際的ではなく、帰国者・接触者相談センターへの電話の機会を増やし、回線が通じにくくなる可能性を高めます。

小児では、原因不明の発熱が続く、呼吸が苦しい、経口摂取ができない、ぐったりしているなどの様子が見られるときは、速やかに医療機関を受診してください。ただし、小児であっても濃厚接触者や健康観察対象者である場合は、まず地域の帰国者・接触者相談センターにご相談ください。

Q.
病院における面会は全面的に禁止したほうが良いですか?
A:
すべての入院中の子どもにとって保護者の方との面会は非常に重要です。小児への面会については、必要最小限の人数に絞り、感染対策を強化しながら継続が望ましいと考えます。また、面会者の方は、自宅で体温を測り、咳、鼻汁、下痢、嘔吐などの症状がないことを確認した後、子どもの面会前には、手洗いとマスク着用などの感染対策を守ることなどの協力が必要です。新型コロナウイルス感染症に感染した子どもへの面会については次のQAをご参照ください。
Q.
もし子どもが新型コロナウイルス感染症にかかった場合、入院は必要ですか?また、入院した場合に保護者の面会や付き添いは可能ですか。
A:

子どもが新型コロナウイルス感染症にかかった場合、ほとんどの場合は軽症で医学的には入院する必要はありません。また、ほとんどの場合は家庭内で保護者から子どもにうつったものになりますので、隔離を行う目的で子どもを単独で入院させるケースは極めて限られると思われます。したがって、軽症の場合は自宅あるいは宿泊施設等での療養が望ましく、入院した場合でも速やかな退院が望ましいと思われます。ただし保健所との相談が必要であり、また自宅療養後も電話等による健康状態の確認が必要になります。

子どもの具合が悪く入院加療が必要な場合は、保護者は感染者あるいは濃厚接触者である可能性が高く、病院への来院や面会が出来ない可能性があります。しかし、保護者が既に回復されている場合など個々の状態を加味して、病院の診療体制や地域の流行状況などとあわせて、異なる対応が予想されますので、担当医とご相談ください。

Q.
保育所、幼稚園、学校などに行くことは控えたほうが良いでしょうか
A:

子どもへの感染の多くは同居している成人(保護者)感染者からの伝播によるものです。保育士からの子どもへの感染や子供同士の感染は少なく、保育所、幼稚園、学校などへの通園、通学を自主的に控える理由はありません。しかしながら、地域で小児の患者が発生した場合、またはそれが想定される場合には、一定期間、休園や休校になる可能性があります。今後の流行状況に応じて、臨機応変な対応が必要となりますので、お住まいの地方自治体からの指示に従ってください。

また、各家庭内で感染者がでた場合は、その子どもは濃厚接触者として登校、登園を控えることになります。また、厚生労働省から微熱や風邪の症状がある場合は、登校、登園を控えるようにという推奨が出ています。それらを守っていただくことが大事です。

Q.
学校が休校となりましたが、子どもは外出や友達と遊ぶことを避けたほうが良いでしょうか?
A:

子どもにとって遊ぶことは、心身の発達においてとても重要です。感染のリスクを下げるために以下のことを守れば、外出や子ども同士の遊びは可能です。

外出自粛要請が出ている地域では以下のことを守りましょう

  • 同居している兄弟、家族等同士で遊ぶこと
  • 屋外では、他人との接触を避けること
<屋外における遊び>

屋外の遊びであれば感染伝播のリスクは低いと考えられますが、以下の点を確認し注意して下さい。

  • 風邪症状(のどの痛み、咳、発熱など)があるときは、外出は控える
  • みんながよく触れる場所に触った後は手洗いをする
  • 飲食の前にも手洗いをする
<屋内における遊び>

屋内における遊びについては、屋外よりリスクが高くなりますので、以下の点を確認し注意して下さい。

  • 周囲に明らかな感染者がいない
  • 遊ぶ場所に高齢者や基礎疾患のある方がいない
  • 本人や家族に風邪症状(のどの痛み、咳、発熱など)がない
  • 少人数である
  • 保護者同士の了解が得られている
  • みんながよく触れる場所に触った後は手洗いをする
  • 飲食の前にも手洗いをする
<屋外・屋内で遊ぶ際に起こりやすい事故への対応・予防策>

こちらをご参照下さい。
http://kodomo-qq.jp/jiko/index.php (日本小児科学会 こどもの事故と対策)

Q.
乳幼児健診や予防接種を遅らせたほうが良いですか?
A:

乳幼児健診の目的は、年齢ごとに起こりやすい病気や問題を早めに見つけて治療などに結び付けることです。予防接種についても、感染症にかかる前に接種する事が極めて重要です。

新型コロナウイルス感染症を予防するための対策も重要ですが、極端な制限によって予防できる他の重要な病気の危険性にさらされることを避ける必要があります。今後も数か月単位での流行が想定され、その間に乳幼児健診や予防接種を回避するデメリットは大きいと考えられます。実施にあたっては、いつも以上の配慮が必要になりますが、保護者と実施者が協力し可能な限り予定通りに実施すべきと考えます。

感染者が多く緊急事態宣言が発出されている地域では集団での健診や予防接種を行う体制を整備する事は困難だと思います。

まず、集団健診や集団接種を実施している自治体においては、臨時的にでも個別健診や個別接種を可能としてください。本来なら接触する可能性のない子どもや成人を同じ場所に集めないだけで、非常に有効な感染拡大防止に繋がります。また、保健指導等は必要に応じて電話等でおこなうことも検討してください。

集団・個別に関係なく、一般的な感染症対策として、お子さんや付き添いの保護者の方については、発熱や咳などの症状がないことを確認すること、成人では手指消毒や手洗いの励行とマスクの着用は必須です。

また、可能な限り、きょうだいや祖父母などの同伴を避けること、健診や予防接種の会場や医療機関でオムツを替えないこと(新型コロナウイルスは糞便中に排泄される可能性が指摘されているため)も心がけてください。

どうしても集団で実施する自治体においても、時間ごとに来場・来院する人数を調整したり、会場の動線などに配慮して人の接触が最小限になるよう工夫すると共に、必要に応じて会場や器具の消毒や来場者の手指消毒や手洗いができるよう資材等を準備してください。加えて、健診や予防接種の機会を逃したお子さんについては、後日必ずその機会が与えられるよう配慮してください。

(日本小児科学会HPより改編)

6検査について

PCR検査って?

■PCR法を用いた検査と検査キット(抗体検査)の違いは??

PCR法と抗体検査の違いを表にまとめてみました。

PCR検査は、現在ウイルスが体内に存在しているのか(感染しているのか)を調べることができます。これに対して抗体検査は、過去に感染したことがあるのかや、現在の感染の状態(感染初期なのか、感染してかた時間が経過しているのか)、ウイルスに抵抗する能力(抗体)をすでに獲得しているのか(人にうつしにくいのか)を調べることができます。

PCR検査では、鼻咽頭に綿棒などを入れ、鼻の奥をぬぐった粘液(鼻咽頭ぬぐい液)や気道の奥から排出される痰を検査します(インフルエンザのように鼻の奥から検体を採取する)。鼻咽頭ぬぐい液の採取は専門家(医療従事者)が行う。検査キット(抗体検査)は、抗体が血液中に存在するため、血液を採取して検査します。

PCR検査は抗体検査より精度は良いが、PCR検査も含むすべての検査で偽陽性(感染していないのに陽性と判定される)、偽陰性(感染しているのに陰性と判定される)があります。

そしてもう一つ、知っておいていただきたいことは。

PCR検査は、どの施設の、誰でもが実施できるわけではないことを。感染性のあるウイルスを取り扱うのなら、なおさらのこと。適切な設備、適切な機材、正しい知識と正しい技術を持った専門家が揃わなければ、実施できません。設備が不十分だと、さらなる感染を起こしてしまう可能性があります。機材がなければ検査はできません。適切な専門家がいなければ、正確な検査結果が出ません。

PCR検査は公的医療保険でできるようになりましたが、インフルエンザの検査のようにどの医療機関でもできるわけではありません。定められた「帰国者・接触者外来」を受診し、医師が必要と認めた場合に限られます。

「検査を限定しているので隠れた患者がいるのではないか」との声があります。政府の専門家会議のメンバーは「感染が広がり、隠れた患者がいれば、各地の病院で原因不明の肺炎が増えているはずだが、そのような話はない。すべての患者を把握できていないかもしれないが、その数は多くはなく、重症者や死亡者としては出てきていないと思う」と説明しています。

PCR検査を受ける流れ

——検査を望む人が増えています。

感染のあるなしを正確に判定できると誤解があるようです。PCR検査は感染しているのに陰性となる「偽陰性」や感染していないのに陽性と判定される「偽陽性」が出ることが避けられません。100人の感染者のうち最大でも約70人しか検査では陽性にならないとみられています。本当は感染しているのに、検査結果が陰性だったら感染を広げる可能性があります。本当は感染していないのに陽性になれば、隔離のため入院することになり、病床不足につながりかねません。

——幅広い人に検査が受けられるようにした方がいいという意見もあります。

どれくらいの人が感染しているかを調べることに意義がないとは思いません。現在も集団感染がおきた場所では症状によらず接触者を検査しています。ただ、全国的な調査をやる時期ではないと思います。今検査を行う最大の目的は、重症者を治療につなげ、死なせないことです。そこに医療資源を費やすべきです。軽症者を洗い出す検査を増やすことで、重症者への対応が遅れてはなりません。

——早期発見、早期治療とよく言われています。

新型コロナウイルスの場合、風邪のような症状が1週間ぐらい続き、そのまま治ってしまう人が約8割、約2割が重症化すると言われています。ただ、早く見つけても重症化を防げるわけではなく、早く病院へ行くメリットはないのです。

病院へ行って院内感染を起こすリスクの方が大きいです。病院には重症化しやすい高齢者や、循環器系や呼吸器系の慢性疾患の人が集まっています。こうした点から、不確実性が高いPCR検査を受けるために病院へ行く意味は非常に薄いと言わざるを得ません。

——海外ではより多くの検査をしているようです。

通常、接触歴が追えて封じこめが望める状況では無症状者を含めて多くの検査をしますが、国内に接触歴がわからない患者が増えてくると、重症者を中心に検査する方向に徐々にシフトしていきます。PCR検査はインフルエンザの迅速検査とは違い、検体を検査機関に運び特殊な技術を使って遺伝子を抽出して、特別な機器で増幅させます。専門的な訓練が必要で、病院の検査技師なら誰でもできるわけではありません。

つらくなければ自宅で療養して下さい。高熱が続く場合や息苦しさが出れば、帰国者・接触者相談センターに電話をした上で医療機関を受診してください。「非感染の証明書」をもらいに病院へ行くのはデメリットしかありません。

アポなしで病院・医院に行っても検査をしてくれる?
~上手な病院のかかりか方~

病院・医院では、厚生労働省や保健所など行政機関からの指示に基づいた感染対策を実施した上で診療を行っております。新型コロナウイルス感染症の院内感染を防ぐために、来院されるすべての皆さまは、マスクの着用をお願いしています。また、自覚症状(発熱、咳、倦怠感など)がある方には、渡航歴や居住歴、またそのような方との濃厚接触がなかったかをお聞きしております。また、症状により診察は他の患者様と別の部屋で行う場合があります。その際に関わる職員は、防御服などを着用し対応させていただきます。(マスクはご自身でご準備ください)

下記症状がある場合は、『帰国者・接触者電話相談センター』または『都内保健所合同電話相談センター』へお問い合わせ下さい。また、病院・医院受診を希望される場合には必ず来院前に医療機関電話にてご相談ください。

  • 37.5℃以上の発熱や呼吸器症状、倦怠感などの症状があり、新型コロナウイルスと診断された人と濃厚接触したことがある。
  • 37.5℃以上の発熱や呼吸器症状、倦怠感などの症状があり、発症前14日以内に渡航歴がある。
  • 37.5℃以上の発熱や呼吸器症状、倦怠感などの症状があり、発症前14日以内に地域流行地への渡航歴、居住歴があるものと濃厚接触をしたことがある。

一般の医療機関では、保健所からの要請がなければ新型コロナウイルスの検査はできません。

新型コロナ受診相談窓口(帰国者・接触者電話相談センター)

症状がある方、感染が疑われる方
発熱が続いている方や、呼吸器症状がある方、流行地域への渡航歴(注釈1)や患者との接触歴がある方は新型コロナ受診相談窓口(帰国者・接触者電話相談センター)にご連絡ください。

新型コロナ受診相談窓口(帰国者・接触者電話相談センター)
受付時間 窓口 電話番号
平日 : 9時から17時 大田区相談センター TEL 03-5744-1360
FAX 03-5744-1524
平日 : 17時から翌9時
土日祝日 : 終日
都・特別区・八王子市・町田市
合同電話相談センター
TEL 03-5320-4592
一般的な相談(ご自身の症状に不安のある方など)
  1. 東京都新型コロナコールセンター
    多言語(日本語、英語、中国語、韓国語)による相談
    電話番号 : 0570-550571(ナビダイヤル)
    受付時間 : 9時から21時(土日祝含)

  2. 大田区保健所感染症対策課
    平日 : 8:30~17:15
    電話 : 03-5744-1729

日曜日に発熱・咳がでたとき医師会の休日診療所に行ってもいいの?

新型コロナウイルス流行拡大のため、受診希望の方は事前に電話連絡の必要があります。

03-3772-2402までお電話頂いて個別に症状をお伺いしてから対応をご案内しておりますので、連絡なしの直接受診は極力お避けくださいますようお願いいたします。症状によっては東京都新型コロナ受診相談窓口への電話相談、自宅安静での経過観察、もしくは他院への受診をお勧めさせて頂く場合がございますのでご了承ください。

(万一、直接受診してしまった方々にもインターホン対応で同様のご案内をさせて頂きます。)

東京都新型コロナ受診相談窓口への電話相談の結果、休日診療所の受診を勧められた方や他疾患の方の診察は通常どおり行っておりますのでご安心ください。

感染拡大予防のため、マナーを守ってのご利用をお願いいたします。

7新型コロナウイルスの治療は?

COVID-19の治療薬として候補に挙がっているのは、▽抗ウイルス薬レムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ)▽抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)▽抗HIV薬ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィの「カレトラ」)▽喘息治療薬シクレソニド(帝人ファーマの「オルベスコ」)▽皮膚エリテマトーデス/全身性エリテマトーデス治療薬ヒドロキシクロロキン(仏サノフィの「プラニケル」)▽膵炎治療薬ナファモスタット(日医工の「フサン」など)——など。

国内でもこれらの薬剤の投与がアカデミアによる観察研究や臨床研究として行われているほか、一部の薬剤については企業による臨床試験が始まっています。

レムデシビル(米ギリアド)

レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬。コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示すことが明らかになっており、COVID-19の治療薬として最も有望視されている薬剤の1つです。

現在、中国(中日友好医院主導)と米国(国立アレルギー・感染症研究所=NIAID主導)で医師主導臨床試験が行われており、国立国際医療研究センターはNIAID主導の臨床試験に参加する形で国内でもレムデシビルの臨床試験を進めています。

ファビピラビル(富士フイルム富山化学の 「アビガン」)

ファビピラビルは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、新型インフルエンザに備えて国が200万人分を備蓄しています。

ファビピラビルは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬剤。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。

シクレソニド(帝人ファーマの 「オルベスコ」)

シクレソニドは、日本では2007年に気管支喘息治療薬として承認された吸入ステロイド薬。国立感染症研究所による実験で強いウイルス活性を持つことが示され、実際に患者に投与したところ肺炎が改善した症例も報告されています。

国内では日本感染症学会が主導する観察研究が行われており、全国の医療機関から報告を集めて有効性の評価を進めています。帝人ファーマは厚生労働省からの要請を受け、この研究のためにシクレソニドの供給体制を確保。国立国際医療研究センターも臨床研究を計画しています。

ロピナビル / リトナビル配合剤(米アッヴィの 「カレトラ」)

ピナビルはウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬で、リトナビルはその血中濃度を保ち、効果を増強する役割を果たします。これらの配合剤であるカレトラは、日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。

動物モデルを使った研究でMERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示唆されました。中国を中心にCOVID-19患者を対象とした臨床試験が複数行われていますが、中国の研究グループは3月18日付の米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、カレトラを投与しない群と比べて臨床的な改善までの時間に差はなかったとの結果を発表しました。

抗IL-6受容体抗体 / JAK阻害薬

サイトカインストーム(過剰な免疫反応)を抑制することで重篤な呼吸障害を改善する効果を期待して、新型コロナウイルスによる重症肺炎を対象に、免疫を抑える薬剤の開発も進められています。

スイス・ロシュは4月から、中外製薬が創製した抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(製品名「アクテムラ」)の臨床試験を米国、カナダ、欧州などで開始。中外製薬も近く、国内で臨床試験を始める予定です。米リジェネロン・ファーマシューティカルズと仏サノフィも、共同開発した抗IL-6受容体抗体サリルマブ(同「ケブザラ」)のP2/3試験を欧米で実施中。日本でも近く試験が始まる見通しです。両剤はいずれも、日本で主に関節リウマチの治療薬として使われています。

スイス・ノバルティスは4月2日、サイトカインストームを伴うCOVID-19患者を対象に、JAK阻害薬ルキソリチニブ(同「ジャカビ」)の臨床試験を準備していることを公表しました。日本では骨髄線維症と真性多血症の適応で承認されており、同社は「日本の規制を遵守しながら必要とする患者に届けられるよう検討していく」とコメント。JAK阻害薬では、トファシチニブ(米ファイザーの「ゼルヤンツ」)もイタリアで医師主導の試験が行われています。

その他

国政府は抗マラリア薬リン酸クロロキンがCOVID-19に一定の効果を示したと発表しており、日本でも同薬と類似したヒドロキシクロロキンを投与して症状が改善した症例が報告。群馬大では、ロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキンの3剤併用療法の臨床研究が始まっています。東京大医科学研究所は、ナファモスタットがCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の細胞内への侵入を阻止する可能性があるとの実験結果を発表。近く臨床研究を始めるとしています。

既存薬を転用するアプローチで治療薬の開発が進む一方で、新規の薬剤を開発しようとする動きも広がっています。

新型コロナウイルス感染症に有効な薬はまだありません。

レムデシビル、ロピナビル/リトナビル(カレトラ)、ファビピラビル(アビガン)、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)などが治療薬の候補として、臨床研究や適応外使用という形で国内外で使用されていますが、明らかな有効性が確認されたものはまだありません。

ECMO(エクモ)ってどんな機器?

ECMO(エクモ)体外式膜型人工肺 : Extracorporeal membrane oxygenationは、重症呼吸不全患者または重症心不全患者に対して(時に心肺停止状態の蘇生手段として)行われる生命維持法であり、心臓と肺が生命を維持するのに十分な機能を失った際に、心臓と呼吸の補助をする治療法です。

脱血した血液を、人工肺にて二酸化炭素を拡散により除去し赤血球に酸素を付加(酸素化)し、再び体内に送血します。肺が本来行うべき酸素化と二酸化炭素除去を代替し、肺を全く使用しなくてもよい状況(Lung Rest)を作り出す機器です。

8ワクチンはいつ頃できるの?

モデルナのmRNAワクチンとイノビオのDNAワクチンが治験開始

米国立衛生研究所(NIH)は3月16日、NIHの一部門である国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と米バイオベンチャーのモデルナが協力して開発したmRNAワクチン「mRNA-1273」のP1試験を始めたと発表しました。CrinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のP1試験は18〜55歳の健康な男女45人を対象に実施。ワクチンを4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価します。

米イノビオ・ファーマシューティカルズも4月6日、DNAワクチン「INO-4800」のP1試験を米国で開始したことを明らかにしました。試験は、健康成人40人に4週間隔で2回ワクチンを投与するもので、今夏の終わりまでにデータが出る見込みです。

新型コロナウイルスに対するワクチンの開発をめぐっては、ノルウェーに本部を置く「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ/NIADI▽独キュアバック▽米ノババックス▽英オックスフォード大▽香港大▽仏パスツール研究所/豪テーミス/米ピッツバーグ大——とパートナーシップを締結。資金提供を行い、ワクチン開発を支援しています。

ノババックスは自社開発したナノ粒子ワクチンのP1試験を今年の晩春に始めるとしています。英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、アジュバント技術の提供でCEPIの開発プログラムに協力。GSKはさらに、中国のクローバー・バイオファーマシューティカルズとも研究協力に合意しました。クローバーにもアジュバント技術を提供し、同社創製のワクチンの大量生産をサポートします。

米ファイザーと独ビオンテックはCOVID-19に対するmRNAワクチン「BNT162」を共同で開発しており、4月末までに欧米で臨床試験を始める予定。両社は製造能力の拡大も進めており、今年末までに数百万回分のワクチンを供給できる可能性があるとの見通しを示しています。米ジョンソン・エンド・ジョンソンも9月までに基礎的な試験を始める予定で、「規制当局への承認申請後、2021年初頭に緊急用に利用可能になると見込んでいる」としています。

仏サノフィはCOVID-19ワクチンの開発で2つのプロジェクトを進めています。組み換えタンパク質をメースとするワクチンの開発に着手しているほか、3月下旬には米トランスレート・バイオとmRNAワクチンの開発に向けた提携を発表しました。

日本企業では、アンジェスが3月5日、大阪大とDNAワクチンを共同で開発すると発表しました。タカラバイオが製造面で協力し、化学大手のダイセルが有効性を高めるための新規投与デバイス技術を提供。アンジェスは「6カ月以内のできる限り早い時期の臨床試験開始を目指す」としており、同26日には非臨床試験の開始を発表しました。

田辺三菱製薬もワクチン開発に乗り出しています。同12日、カナダの子会社メディカゴが、SARS-CoV-2の植物由来ウイルス様粒子(VLP)の作製に成功したと発表。これを使ったCOVID-19向けワクチンの非臨床試験を行っており、「順調に進めば、ヒトでの臨床試験を今年8月までに開始するために当局と協議したい」(田辺三菱)としています。

このほか、アイロムグループのIDファーマは、中国・復旦大付属上海公衆衛生臨床センターとワクチンの共同開発で合意。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すといいます。

9乳児へのBCGワクチンの優先接種のお願い

昨今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内外で大きな問題となり、BCGワクチンによる予防効果を期待する声がありますが、日本ワクチン学会が示す見解のように、いまだ科学的に実証されたものではありません。

BCGワクチンは、結核に対する予防ワクチンであり、日本では小児に対して予防接種法に基づく定期接種が実施されています。定期接種の対象者は0歳児であり、結核性髄膜炎や粟粒結核など低年齢小児で頻度の高い重症の結核を予防する有用性が最も高いという理由に基づいています。

したがって、世界各国でも新生児や乳児を対象に接種が行われており、成人や高齢者を対象とした知見は十分ではありません。また、結核菌の既罹患者やBCG菌に対する免疫を有する者に接種した場合、強い接種局所反応などの副反応が出現する可能性があります。

以上のことより、BCGワクチンを接種する優先対象は、定期接種の対象者である0歳児であると日本小児科学会は考えます。また、BCGワクチンの供給量には限りがあります。

これまでのエビデンスに基づいて最も接種が優先される0歳児にBCGワクチンの供給問題が生じないよう、ご賢察をよろしくお願い申し上げます。

10これを機会にぜひ禁煙を
~新型コロナとタバコの危険な関係~

喫煙は、様々な病気の危険因子であることはよく知られています。では、新型コロナウイルスとの関連はあるのでしょうか。

最近になり、各国の専門家から喫煙が新型コロナウイルス感染の重症化の要因になっているという指摘が相次ぎ報告されています。中国では、男性の死亡率が女性よりも3倍ほど高いのですが、その要因として中国人男性の高い喫煙率(男性は50%以上、女性は3%程度)が挙げられています。また、中国の病院に入院した患者78人のデータでは、喫煙歴のある人は重症化する割合が有意に多かったという結果でした(オッズ比14)。

新型コロナウイルスは、肺胞のアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)という受容体を介して人体に侵入することが明らかにされています。喫煙はこのACE2の発現を著しく増加させるという報告があり、喫煙者が感染すると重症化する恐れがあると指摘されています。

この機会に、ぜひ禁煙に取り組んで下さい。

11ストレス対策について

Q1.
新型コロナウィルスに感染するのではないか不安です。感染して隔離されることを考えると恐ろしい感じがします。悩みが多くて、自分が心の病気になっているのか心配です。
A1:
新型コロナウィルス感染症流行時は、心配なことがいくつもあります。例えば、1)目に見えないウィルスであること 2)新しい病気でありまだ明確な予防、治療法が 確立していないこと。人間はわからないものを恐れる傾向があります。また、TVなどで刺激が強い情報も多く流れています。普通の生活が奪われています。このようなとき、不安や恐怖を抱くことは、特殊な環境下での心の反応であり、特別な心の動きではありません。心の病気になっているとまでは言えません。
Q2.
心の病気になっているのか、参考になる、方法はありますか。
A2:

強いストレスに長期間にわたってさらされていると、ストレスから精神的な不調、病気になってしまうことがあります。病気を疑う症状としては、次のことがあります。

  1. 強度の不眠があり、毎日眠れない。
  2. 食べ物の味はわかるが、食べる気がしない。結果体重が減ってしまった。(味覚、嗅覚が感じられないときは、新型コロナウィルス感染症の症状かもしれません。)
  3. やる気がせず、考える力がとても落ちてしまった。ぼーっとして動けない。
  4. 憂うつだ。イライラして落ち着かない。

この中の、いくつかの症状がありましたら、悩みということより、心の病気を考えてもよいと思います。

Q3.
Q2の症状があります。対処について教えてください。
A3:
ストレス反応やうつ病の始まりかもしれません。専門医に相談する方法もありますが、まずは、あなたのことをよく知っている「かかりつけ医」の先生に相談してください。
Q4.
ストレス対処法を教えてください。
A4:
ストレスへの対処は、厚生労働省のホームページで心の耳に記載されています。ご覧ください。感染予防を行うことでも不安も解消されます。感染予防で出来ることは実行してください。