第一回

今にはじまったことではないですが、世の中においては実に様々な問題点が次々に噴出し、それに対して批判、問題提起、そして対策が叫ばれる訳ですが、医療界にあっても多くの問題点が指摘されているのはご承知の通りです。

そこで今回、それらの中から地域医療における医療機関の役割分担についてお話しし、皆さんのご理解ならびにご協力を得たいと考えています。そのことが延いては、皆さんご自身が受ける医療の中身の改善にいささかなりとも役立つものになるからです。

では、「役割分担」とはどのようなことでしょか?数ある地域の医療機関については、我々開業医である「かかりつけ医」、大学病院をはじめとする高度で専門性の高い大病院、そしてその中間に位置する中小の病院、大まかに言ってこの三者に分かれるのですが、これらの役割は自ずと異なっており、その役割に応じた医療を皆さんに提供するのが本来のあるべき姿なのです。無論、この三者はお互いに連携を取りつつ時にオーバーラップする場合もある訳で、必ずしも先に述べたようなクリアカットに分けられるものではないのが実際のところですが…。

高度な専門性の高い医療については、かかりつけ医では無論扱えず、中小の病院でもなかなか扱いにくいと思われますので、皆さん自身もやはり“先ずは大病院へ”と言うことになろうかと思います。しかし問題なのは、軽症な病気やケガの場合であっても先の専門性の高い大病院に安易に(敢えて「安易」と申し上げます)受診してしまうことです。どうしても最初から高度な医療機関を受診したいとの願望も良くわかるのですが、例え結果として重大な病気であったとしても初期には軽い症状の場合が多く、大病院を受診していなくとも、万が一の際は即刻大病院へ紹介するとの連携システムがきちんと構築されていますので安心して頂いて結構です。

以上述べたように、軽症の患者さんが大病院に集中してしまうと勤務医の負担が一層増すことになり、本来の役割である重症の患者さんや専門性の高い患者さんに対する治療に支障を来たす結果となるのです。しかも大学病院では、「診療」の他に「教育」、「研究」を行う役割を担っている点も理解して頂きたいのです。

従って、軽度な病気やケガの患者さんにあっては、最初から専門性の高い大病院を受診することは、今後決して(「決して」と、再度敢えて申し上げます)なさらないようにお願いしたいのです。その役割は町のかかりつけ医、中小の病院が担うことになっているからです!(決して「我田引水」などではなく…)